福山市 医療法人 幸美会
なかむら歯科クリニック
歯科医師 土屋 知加
今日は、父が作成した文章を紹介したいと思います。
『医学の言葉』
金田一晴彦の息子金田一秀穂氏のおもしろい文章が目に留まりました。
理系の言葉と文系の言葉、その中間にあるのが医系の言葉と思うと
言うのです。
以下概略ですが、
理系の言葉は数字で語られ、安全「性」とか、可能「性」は言えるが、
あくまでも安全や絶対の約束はできないのが、自然科学の信条であり
誇りでもある。
それらはともすれば人工的であり殺風景になってしまう。
一方、文系の言葉は、人への愛や信頼を語るが、曖昧模糊として
感情的であり、論理的な解説よりも身体的な納得を導こうとする。
医学の言葉は、臨床である限り、その中間にあって、その基礎は
あくまでも実証的、科学的であらねばならないけれど、人を
相手にする限り、わかる言葉、優しい言葉、人間的な言葉を
使わなければならない。
理系の言葉と文系の言葉の双方に通じていなければ、いい医者
とは言えない。説得力があるためには理系の能力が必要であり、
信頼を得るためには文系の言葉がいる。検査してその数値だけ見て
判断し、それを告げるだけなら、近い将来コンピュータが完璧に
やってくれるだろう。安い電卓でも、暗算名人よりは早く平方根
の計算をしてくれる。しかし、それしか出来ない。
機械は辛抱強く、何度でも飽きることなく繰り返すことをしてくれる。
機械は不平を言うことなく、危険な作業を大胆正確に行ってくれる。
機械の中だけにいれば、それなりの安定が望める。
しかし、人は機械ではないし、機械ほど愚かでもない。
人の使う曖昧な文系言葉への冒険に、勇気を振り絞って飛び出してほしい。
人を相手にして、愚かな機械のような単純、確実なことは何一つないことを
若い医者を志す人には知っておいて欲しい。と結んでありました。
私の受けた医学教育を振り返ってみると、患者の話し方は大学ではなく
オーベンの傍で話し方を学び、他の先輩から当直の夜などに病状説明の
コツなどを教えてもらいながら、次第に自分のやり方が出来上がったように
思います。
曖昧な言葉を並べて納得してもらい、今ほど細かい数字を並べての説明はそれほど
要求がなかったように思います。当然、ほとんどの医師は理系、文系、医系の
言葉など気にすることなく、今までの経験を元に状況に応じて使い分けているでしょうが
しばしば説明不足などをマスコミ批判される中にあっては、文系の言葉をもっと上手に
取り入れた接し方を模索し、会得するべきなのかもしれません。
と締めくくっていました。
今まさに私が模索している内容と同じでした。非常に考えさせられる内容です。
理系の言葉ばかりになりがちですが、失敗を恐れずにもっと文系の言葉も
取り入れれる人になれるよう意識して生活していかなければならないと思いました。
理系も文系も私も取り入れて語れるように、相手に思いが届くようになりたいですね!
じーん、ときますね
医療人にとって、本当に大切な部分だと確信します。